この記事の結論
朗読劇・朗読会に音楽をつけるときは、「ずっと流す」のではなく、①始まり ②場面の変わり目 ③山場 ④終わり の4か所に絞って入れるのが基本です。読んでいる間は音を小さくするか止め、読む声と同じ高さの楽器を声の後ろで長く鳴らさないこと。どこで・何を・何秒鳴らすかは、作品を読みながら1枚の「音の台本」にまとめます。
1. なぜ「流しっぱなしのBGM」は失敗しやすいのか
朗読会でよく聞くのが「音楽はよかったけれど、言葉が聞き取りにくかった」という声です。原因の多くは、BGMを最初から最後まで同じ音量で流していることにあります。
人の話し声は、ピアノの真ん中あたりの高さに集まっています。同じ高さで鳴る楽器(ピアノの真ん中の音域、ギター、ヴィオラ、歌の入った曲など)を声の後ろで長く鳴らすと、言葉の輪郭がぼやけます。客席の後ろの席や、耳の聞こえにくい方には、なおさら届きにくくなります。
音楽ファーストの代表・たーなー先生は、ボイストレーナーとして30年、延べ5万人以上の声を指導してきました。読む声が「通る」かどうかは、声の出し方と同じくらい、周りの音とぶつからないかに左右されます。朗読の音楽は、声を飾るものではなく、声が届く「間」をつくるものと考えると、失敗が減ります。
2. 音を入れるのは4か所だけ
1)始まり(30〜60秒)
客席を静かにし、作品の世界に入る合図です。明かりが落ちてから鳴らし、読み始めの前に音を小さくして終えます。
2)場面の変わり目(5〜15秒)
時間が飛ぶ、場所が変わる、語り手が替わる所に短く入れます。ここで長く鳴らすと、話の流れが止まります。
3)山場(音を「引く」ことも含めて決める)
いちばん伝えたい行の前後は、思い切って音を消すと言葉が立ちます。山場にこそ大きな音を、と考えがちですが、朗読では反対のことが多いです。
4)終わり(余韻を残し、拍手のきっかけに)
最後の一行の後、1〜2秒の無音を置いてから静かに鳴らすと、余韻が残り、客席も拍手のきっかけをつかめます。
3. BGM・効果音・生演奏、どれを選ぶか
録音のBGM
会場が小さい、何度も同じ形で再演する、予算を抑えたいときに向きます。読む速さは毎回変わるのに録音は伸び縮みしないので、きっかけの行で鳴らし始め、読み始めでフェードアウトする操作の係が要ります。
効果音(波・風・足音・雨・時計など)
場面や季節を一瞬で伝えたいときに向きます。入れすぎるとラジオドラマのようになり、聞く人の想像を狭めます。1作品で3〜5か所までが目安です。
生演奏(ピアノ・チェロ・バイオリン・ギター・フルートなど1〜3名)
読む人の息に合わせて音を伸び縮みさせたい、山場で音を待ちたい、催しの特別感を出したいときに向きます。朗読に合わせた経験のある演奏者を選び、通しのリハーサルを必ず1回入れます。
組み合わせも多く使われます(例:始まりと終わりは生演奏、場面の変わり目は録音の効果音)。
4. 声を消さない、音量と楽器の決め方
- 読んでいる間の音量は、「客席のいちばん後ろで、声がはっきり聞き取れる」大きさが上限。リハーサルで、だれか1人が後ろの席に座って確かめます。
- 読む声と高さが離れた楽器を選ぶ:低いチェロのロングトーン、高いフルートやグロッケンの短い音は、声とぶつかりにくい。
- 歌の入った曲は、読んでいる間には使わない(言葉と言葉がぶつかるため)。
- マイクを使う会場では、音響の方に「音の台本」を渡し、どの行で音量を下げるかを共有します。
- 読む人の声が後ろまで届かないときは、音を小さくするより先に、声の出し方(姿勢・息の量・語尾を落とさない読み方)を整えるほうが早いことがあります。
5. 音の台本の見本
音を入れる場所が決まったら、作品の行に合わせて1枚の表にします。演奏者・音出しの係・音響の方が同じ表を見ることで、本番の「入れ忘れ」「出し遅れ」が防げます。
| 場面 | きっかけの行 | 音 | 長さ | 音量 |
|---|---|---|---|---|
| 開演 | 客席の明かりが落ちたら | ピアノのテーマ(生) | 45秒 | 中→小で終える |
| 第1場 | 1行目の前 | 波の音(録音) | 10秒 | 小。読み始めで消す |
| 場面転換 | 「○年が過ぎた」の後 | チェロの短い旋律(生) | 12秒 | 中 |
| 山場 | いちばん伝えたい行から | 音なし | — | 声だけにする |
| 終わり | 最後の一行の後、2秒置いて | テーマの再現(生) | 40秒 | 小→中→消える |
行は例です。台本に鉛筆で印をつけ、表の「きっかけの行」と同じ番号を振っておくと、本番で迷いません。
6. フリー音源・既存の曲と、作品の権利で気をつけること
- 「フリー」と書かれた音源でも、使える場所(会場で流すだけか、録画の配信もよいか)、クレジットの表示、商用の可否が音源ごとに決まっています。利用の決まりを読んでから使いましょう。
- 既存の曲を生演奏する場合と、音源を会場で流す場合では、手続きが分かれます。録画を配信するなら、さらに別の確認が要ります。
- 読む作品が著作権の保護期間中のときは、人前で読むことにも作者側の許可が要る場合があります。入場料を取る、出演者に謝礼を払うといった場合は特に確認が要ります。
- 迷うときは、作品の出版社・著作権の管理団体・会場に確認してください(この記事は法律の助言ではありません)。
7. 決める前の5つのこと
- 作品と上演の長さは決まっていますか(音の台本は作品が決まってから作ります)
- 会場の広さと客席の数、音響の設備(マイク・スピーカー・ピアノの有無)は分かっていますか
- 音を出す係はだれですか(朗読する人が兼ねるのは避けます)
- 録画・配信はしますか(する場合、使う音と作品の権利の確認が増えます)
- 通しのリハーサルを、本番の会場か近い広さの部屋で1回できますか
目安の時期:朗読会は本番の6週間前、オリジナル曲のある朗読劇は10週間前までに音の方針を決めると、演奏者の手配と練習が間に合います。
8. 自分たちでやるか、頼むかの分かれ目
30分前後の朗読会で、始まりと終わりに録音の音楽を1曲ずつ流す形なら、この記事の4か所と音の台本の見本で進められます。場面が多く決めきれない、朗読に合わせられる演奏者を知らない、作品に合うオリジナルのテーマ曲や効果音がほしい、読む人の声が後ろまで届かない――こうした場合は、音楽の専門家に相談すると早く確実です。
音楽ファーストでは、作品を読んで音の台本の案を作るところから、生演奏の手配、オリジナルのBGM・効果音の制作(劇伴の作曲)、朗読する方の声の指導までをお受けしています。料金の目安は小規模15万円〜・中規模50万円〜・大規模100万円〜(税別)です。
朗読劇・朗読会の音楽を相談する
作品名と日時だけでもご相談いただけます。
よくある質問
朗読会のBGMは、ずっと流しておいたほうが雰囲気が出ますか?
おすすめしません。読んでいる間も同じ音量で流すと、言葉が聞き取りにくくなります。始まり・場面の変わり目・山場・終わりの4か所に絞り、読んでいる間は音を小さくするか止めるのが基本です。
朗読劇の音楽には、どんな楽器が合いますか?
読む声と高さが離れた楽器が合わせやすいです。低い音を長く鳴らすチェロや、高い音を短く鳴らすフルート・グロッケンなどは声とぶつかりにくく、ピアノは真ん中の音域を避けて弾くと声が立ちます。
効果音はどのくらい入れればいいですか?
1作品で3〜5か所が目安です。入れすぎると聞く人の想像を狭め、ラジオドラマのようになります。場面や季節を一瞬で伝えたい所に絞ります。
朗読劇の音楽を頼むと、いくらくらいかかりますか?
音楽ファーストの料金の目安は、小規模15万円〜・中規模50万円〜・大規模100万円〜(税別)です。作品の長さ・演奏者の人数・曲の数で決まります。
