この記事の結論
卒業式のピアノ伴奏を任されたら、まず「原曲の伴奏を全部弾こう」と思わないことです。伴奏のいちばんの役目は、歌う人が迷わずに歌い出し、最後まで同じ速さで歌えるように支えること。そのために、①細かい動きを減らす ②弾きやすく、歌いやすい調にする ③歌い出しの前に分かりやすい合図を入れる、の3つで楽譜を自分の手に合わせます。練習は本番の8週間前から始めれば、ピアノが専門でない方でも間に合う形にできます。
1. 伴奏は「上手に弾く」より「歌を支える」
式で歌う卒業生や在校生にとって、伴奏は道しるべです。前奏で速さと高さが決まり、歌い出しの合図で全員の声がそろいます。だから伴奏をする方がいちばん気にするべきなのは、きれいな音よりも「同じ速さで、止まらずに最後まで弾くこと」。途中で音を外しても、速さが崩れなければ歌は続きます。反対に、難しい所で止まってしまうと、全員の歌が一度に止まります。
音楽ファーストの代表のたーなー先生(ボイストレーナー歴30年、延べ5万人以上を指導)の歌う側の指導でも、そろって歌えるかどうかは、伴奏の速さが揺れないことと、歌い出しが分かることに大きく左右されます。伴奏の楽譜を直すときも、この2つを最初に守ります。
2. やさしい伴奏譜にする3つの工夫
市販の楽譜や合唱曲の伴奏譜は、ピアノを習ってきた人が弾く前提で書かれていることが多く、そのままでは本番までに弾けないこともあります。次の3つで、自分の手に合う楽譜にします。
工夫1 手を減らす
- 左手の細かい動き(分散和音・速い伴奏の形)は、拍の頭で和音を押さえる形に変える
- 右手は、歌の旋律が入っている所を残し、歌い出しや高い音の前で歌を支える
- 同じ形のくり返しの所は、ペダルで響きをつなぎ、指の動きを減らす
やりすぎると歌が支えられなくなるので、「歌の旋律が聞こえる所」と「拍が分かる所」は残します。
工夫2 弾きやすく、歌いやすい調
- 黒鍵が多い調は、半音か1音動かすだけで弾きやすくなることがあります
- ただし伴奏の調を変えると、歌う人の高さも変わります。高い音が苦しくなる方向に動かさない(卒業式は緊張で声が上がりにくい日です)
- 調を変えるときは、音楽の先生・合唱の指導の方と、歌う側の高さを先に確かめます
工夫3 合図の小節
- 前奏の長さを、式の進行(起立・礼・歌い出し)に合わせて決めます。長すぎる前奏は、起立のあとに間ができます
- 歌い出しの前の1小節は、音を少なくして、拍がはっきり分かる形にします(指揮が無い式でも、全員がそろいやすくなります)
- 2番・3番の前の間奏も、短くしてよいかを式の担当と決めておきます
既成の曲の伴奏を新しく書き直して配る場合は、権利の了解が要ることがあります。自分の練習のために書き込む・弾きやすく弾くのとは扱いが違うので、学校の担当の方と確かめるのがおすすめです。
3. 本番から逆算する8週間の段取り
ピアノが専門でない方が、無理なく間に合う目安です(3月中旬の卒業式なら、1月中旬が8週間前)。
- 8週間前:楽譜を決める。原曲の伴奏と、やさしくした版を見比べ、弾く形を決める。式の担当と、前奏・間奏の長さ、何番まで歌うかを決める
- 7〜5週間前:片手ずつ、ゆっくりの速さで。難しい所に印をつけ、そこだけ毎日くり返す
- 4週間前:本番の速さで通す。歌のガイドの入った音源と一緒に弾き、歌い出しの合図を体で覚える
- 3〜2週間前:歌う人たちとの合わせ。歌う側から「速い・遅い」を聞いて直す。直しはここまで
- 1週間前:会場のピアノで1回弾く(体育館のピアノは、鍵盤の重さや響きが違うことが多い)。楽譜のめくりの位置を決める
- 前日・当日:新しい直しはしない。前奏の最初の2小節だけを、本番の速さで頭の中で歌ってから座る
4. 当日、止まらないための5つのコツ
- 楽譜は、めくりが少なくなるように貼り合わせる(めくる所は、休みの小節か和音を伸ばす所に)
- 弾きながら、歌の声を聞く。歌が遅れたら、伴奏が少し待つ
- 音を外したら、戻らずに次の拍へ。左手の和音だけでも続ける
- 前奏の速さは、練習の音源の速さを思い出してから始める(緊張すると速くなりやすい)
- 指揮者がいる場合は、指揮者の手を見る。いない場合は、歌い出しの前の合図の小節を少しはっきり弾く
5. 楽譜を直すのが難しいときは
「どこを減らせばいいか分からない」「調を変えると歌う人に合うか心配」という場合は、弾く方の腕前と歌う人たちの声の高さに合わせた伴奏譜づくりや、伴奏と歌の練習用音源の制作をご相談いただけます。歌う側の練習音源はパート別の練習音源、校歌については校歌の作詞作曲のページもご覧ください。料金の目安は、小規模15万円〜・中規模50万円〜・大規模100万円〜(税別)です。
卒業式の伴奏の楽譜を相談する
曲名と本番の日だけでもご相談いただけます。
よくある質問
ピアノを習ったことがほとんどありません。卒業式の伴奏に間に合いますか?
弾く形を自分の手に合わせて減らし、本番の8週間前から練習を始めれば、間に合う形にできることが多いです。左手を和音にする、調を弾きやすくする、歌い出しの合図を分かりやすくする、の3つから始めてください。練習の量によるため、早めに楽譜を決めることが大切です。
伴奏を簡単にすると、歌う人が歌いにくくなりませんか?
歌の旋律が聞こえる所と、拍が分かる所を残せば、歌いにくくなりません。むしろ速さが安定するので、歌う人は歌いやすくなることがあります。
調を変えてもいいですか?
変えてもよいですが、歌う人の高さも一緒に変わります。高い音が苦しくなる方向には動かさず、音楽の先生や合唱の指導の方と先に確かめるのがおすすめです。
本番で間違えたらどうすればいいですか?
戻らずに次の拍へ進んでください。右手が止まっても、左手の和音だけで続ければ、歌は続きます。止まらないことがいちばん大切です。
やさしい伴奏譜を作ってもらうには、いつまでに相談すればいいですか?
練習の期間を考えると、本番の2〜3か月前(3月の卒業式なら12月〜1月上旬)のご相談がおすすめです。
