この記事の結論
練習は「毎回同じ5分の声出し」から始め、週ごとに目標を1つだけ決めると、4週間でクラスはまとまります。声が出ないパートは「声を出せ」と言っても変わりません。①口の形と息、②並び方、③出だしの1小節、の3つを変えると、声は自然に大きくなります。本番2週間前に、外の人に一度だけ聞いてもらうと、クラスの「いちばん伸びる所」がはっきりします。
この記事は、合唱コンクールに向けてクラスの練習を進める担任の先生・音楽の先生・指揮者・パートリーダーの方に向けて書いています。
1. 4週間の練習表
本番までの4週間は、週ごとに「目標を1つだけ」にするのがコツです。全部を毎回直そうとすると、練習が長くなり、クラスの空気が重くなります。
| 週 | この週の目標(1つだけ) | 毎回の流れ(20〜30分の例) |
|---|---|---|
| 4週間前 | 自分のパートの音を覚える | 声出し5分 → パートごとに音取り15分 → 全員で1回通す |
| 3週間前 | 全員で止まらずに歌い切る | 声出し5分 → 苦手な所だけ全員で3回 → 通す |
| 2週間前 | 歌詞が客席まで聞こえる | 声出し5分 → 語頭の子音をはっきり → 教室の後ろから聞く係を交代で |
| 1週間前 | 強弱で歌の場面を伝える | 声出し5分 → いちばん盛り上げる所を1か所だけ決める → 本番の並びで通す |
| 前日 | 入退場から本番どおり | 声出し5分 → 入場・礼・歌・退場まで2回 |
2. 毎回同じ「5分の声出し」
毎回同じ声出しをすると、「この5分が始まったら歌う時間」という切りかえがクラスにできます。内容は次の4つで十分です。
- 立ち方(30秒):足を肩幅に開き、ひざを軽くゆるめ、頭のてっぺんを上から糸で引かれる感じ
- 息(1分):鼻から吸って、「スー」と細く長く吐く。全員で同時に始め、だれが最後まで続くかを見る
- 口の形(1分):「ア・エ・イ・オ・ウ」を、指が縦に2本入るくらい口を開けて
- 音(2分30秒):「マ・マ・マ・マ・マー」を、低い音から少しずつ上げていく。高くなったら無理に出さず、出る所まで
のどが痛い・声がかれている生徒は、声出しは聞くだけにして、口の形だけまねをすれば十分です。
3. 声が出ないパートを変える3つの手
「男子、もっと声出して!」と言っても、声はほとんど変わりません。声が出ないのは、やる気より先に「どう出せばよいか分からない」「自分の声だけ目立つのがこわい」が理由のことが多いからです。次の3つは、本人のやる気に頼らずに声を大きくする手です。
手1:口の形と息だけを変える
- 声の大きさではなく、「口を縦に開ける」「息を前に吐く」だけを頼みます
- パートで向かい合い、相手の口が開いているかを見合うと、照れが笑いに変わります
- 変声期で高い音が出ない生徒には、無理に上げさせず、音楽の先生と相談して出る高さの音を歌えるようにします
手2:並び方を変える
- 声の出ている生徒を、出ていない生徒のすぐ後ろ・となりに置くと、聞こえる声につられて音が取りやすくなります
- パートのまん中に、音の取れている生徒を置きます
- 声の小さいパートは、ピアノや指揮者に近い側に寄せると、音が聞こえて入りやすくなります(体育館の本番の並びで一度ためします)
手3:「出だしの1小節」だけを全員で決める
- 曲全体ではなく、最初の1小節(歌い出し)だけを、全員で同じ息で入る練習を10回します
- 出だしがそろうと、その後も声が出やすくなり、聞く側の印象もいちばん大きく変わります
- 指揮者は、入る1拍前に全員と目を合わせ、息を吸う合図を大きく見せます
4. クラスがもめたときの3つの決まり
- 注意は「人」ではなく「場所」に:「○○さんが歌ってない」ではなく「アルトの3段目が聞こえない」
- 直すのは1回の練習で1か所だけ:パートリーダーが1つ選び、終わりに「次はここ」を1つだけ言う
- 最後は必ず1回通して終わる:直しだけで終わらず、できた所を全員で聞いて終える(録音して聞くのもおすすめです)
5. 指揮者・伴奏者の生徒へ
- 指揮者:拍を大きく振るより、「入る前の合図」と「終わりの合図」をはっきり見せるほうが、クラスはそろいます。歌っている間に、各パートの方を一度ずつ見ましょう
- 伴奏者:前奏の最後の1小節を、歌う人が息を吸えるようにほんの少しゆったり弾くと、出だしがそろいやすくなります。伴奏の楽譜の工夫は卒業式のピアノ伴奏を任されたらも参考になります
- 2人とも、本番で緊張したときに戻る「最初の一つ」(指揮者なら最初の合図、伴奏者なら前奏の最初の和音)を決めておきます
6. 外の人に聞いてもらうなら
外の人にクラスの声を聞いてもらうと、「どこを直せばいちばん伸びるか」が一度ではっきりします。1回だけなら本番の2週間前がいちばん効きます。音楽ファーストでは、ボイストレーナー歴30年・延べ5万人以上を指導してきたたーなー先生のチームが、学校の合唱の指導のご相談をお受けしています。パートの音取りの練習用音源はパート別の練習音源でお作りします。料金の目安は小規模15万円〜(税別)です。
よくある質問
合唱コンクールの練習は1回何分がよいですか?
20〜30分を、週に2〜3回が目安です。長い練習を1回より、短い練習を回数多くするほうが、声も集中も続きます。
歌わない生徒がいます。どうすればよいですか?
まず口の形だけまねをしてもらい、パートのまん中・声の出ている生徒のとなりに並べます。注意は人ではなく場所に向けると、本人が責められている感じが減ります。
本番の会場(体育館)で声が小さく聞こえます。
体育館は音が広がるため、教室より口を大きく開け、語頭の子音(「か」「た」など)をはっきり出すと届きやすくなります。本番の前に一度、体育館の後ろから聞く係を作って確かめましょう。
外部の講師に来てもらうなら、いつがよいですか?
1回だけなら本番の2週間前がいちばん効きます。クラスごとに「いちばん伸びる所」を1つ決めて、残りの2週間でそこを練習できるからです。
のどが痛いと言う生徒がいます。
その日は無理に歌わず、口の形だけ・聞くだけで参加してもらいましょう。痛みが続くときは、保健室や医療機関に相談してください。
